涙道閉塞
鼻腔内視鏡を使った涙道手術(DCR)
DCR (涙嚢鼻腔吻合術 ―鼻内法および鼻外法―)
涙は目頭の眼瞼(まぶた)の縁にある上涙点と下涙点の2つの涙点から涙小管、涙嚢、鼻涙管を通って鼻腔へ流出します。これらの涙道のどの部分が閉塞しても涙の流れが悪くなり、目に涙(流涙症)がたまります(図)。
原則として涙道内視鏡を利用した鼻涙管シリコンチューブ留置術を先ず行います。しかし狭窄や閉塞が強固であると、シリコンチューブでは閉塞部を突破することができない場合があります。このような場合は鼻腔へ迂回路、つまりバイパス(図点線)を涙嚢鼻腔吻合術によって作ります。この術式には鼻外法と鼻内法があります。
■鼻外法
長年標準的な手術法でほぼ全ての症例に対応することができます。長期の成功率は90%以上と言われています。目頭の皮膚に約2cmの切開を行って骨に到達し、薄い部分を削り取って鼻腔内に入りバイパスを形成します(図点線)。鼻の外から鼻腔に入るので鼻外法と呼ばれます。次いで上涙点と下涙点からシリコンチューブを挿入し、バイパスを通して鼻腔内に入り留置します。シリコンチューブは3ヶ月程で抜去します。皮膚の切開創は3ヶ月もすれば殆ど目立たなくなります。通常、局所麻酔で行いますが全身麻酔で行うこともあります。
■鼻内法
鼻内法では涙道内視鏡を用いて文字通り鼻腔内から涙道近くの骨を削って涙道に到達します(図点線)。次いでシリコンチューブを上涙点と下涙点から挿入し、削った骨を通して鼻腔内に入り留置します。鼻外法と比べると適応範囲は狭くなりますが、皮膚切開が不要です。成績は両者とも同程度と言われています。しかし、狭窄や閉塞部位によってはこの方法で手術ができないことがあります。その場合は鼻外法になります。また強い鼻中隔偏位やポリープ等がある場合は、これを手術し治してから本来の手術となります。
治療のリスク
下記のような合併症が現在までに報告されていますが、通常起きる可能性は低く、治療のメリットが上回ると判断されます。
代表的な合併症
【出血】
鼻出血を含む、術創からの出血。(これはしばらくして吸収されます)
【眼瞼・皮膚蜂窩織炎】】
涙道を含め周囲組織への感染による炎症も起こり得ます。抗生剤によって治療します。
【涙点の浮腫や炎症】
状態がひどい時はチューブを抜く場合もあります。
【肉芽腫】
炎症により涙点や涙小管粘膜より発生することがあります。症状にもよりますが切除等の処置を要することがあります。
合併症が起きた場合には適宜処置していきますが、このような合併症は、仮に起きても特に重篤な結果に至ることは考えにくいです。
なお手術に起因する合併症を全て把握することは不可能なためリスクおよび併発症のリストは完全なものではありません。御不明な点がありましたら主治医にお尋ね下さい。